日本にはびこる『クリエイターかわいそう現象』について

今日は、僕が勝手に命名した『クリエイターかわいそう現象』について、色々書いていきたいと思う。

『クリエイターかわいそう現象』とは、漫画とか音楽とかネットの記事のような著作物について「クリエイターの対価や給与」に異常に気を遣うくせに、「創作活動と商業を分離したがる」人がやたら居る現象のことだ
僕は、この現象が、クリエイターの継続的な創作活動が阻害されたり、創作側のエゴにユーザーに付き合わされるといった問題を引き起こすと考えており、その辺をうにゃうにゃ説明していきたい。

「クリエイターかわいそう!」大爆発

僕が『クリエイターかわいそう現象』について明確に意識しだした出来事が2つある。
1つ目は、お笑い芸人キングコング西野氏の「金の奴隷解放宣言」、もう1つは「漫画村問題」だ。

– お金の奴隷解放宣言。
https://lineblog.me/nishino/archives/9256089.html

– なぜここまで話題に? 「漫画村問題」を改めて整理する
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1805/02/news026.html

この現象について、その起こりを明確に定義することは難しいが、関連するTwitterの当時の一連の反応を載せておこう。

– キンコン西野氏の「金の奴隷解放宣言」の孕む問題点

– マッチョグルメ作者が「違法漫画サイトに作家として一言物申す」漫画を描いた件について

各ツイートを見ればわかるが、クリエイターの給料とか生活を気にする声が非常に多いことが分かる。
僕はこのノリのことを「クリエイターかわいそう現象」と呼んでいる。

誤解のないよう強調するが、僕は作品の違法鑑賞も、違法サイトである漫画村を擁護するつもりも一切ない
しかし、この『かわいそう現象』は全然クリエイターのためにならないと僕は考えており、それについて警鐘を鳴らしたいのだ。

「クリエイターかわいそう!」が、クリエイターを追い詰める

さて、この現象に対して物申したいのは「そんなんじゃ市場原理に太刀打ち出来ないよ」ってことだ。
といっても、クリエイターかわいそう芸人の方々は経済の市場原理を理解していないようなので、かいつまんで説明する。

モノの価値は需要と供給で決まる

誤解している人が多いが、モノの価値は「それを作る大変さ」や「作る人が生活できるか」では決まらない
これは昨今の労働市場を見れば分かるが、大変だとされる保育士や介護士の給料が全然増えないのはここにある。
それらは(物理的に)誰でも就くことが出来る仕事、つまり供給過剰なために給料が上がらないのだ。

「上手い絵が描ける人」や「いい文章が書ける人」は世の中に吐いて捨てるほど居て、それ自体は何の価値も持たない

– ホリエモン、“保育士ツイート”の真意「大変だから給料が高くあるべきってのは間違い」
http://weblog.horiemon.com/100blog/45087/

多くの市場参加者が自己利益を追求する

皆が自己利益を追求し市場原理は上手く働く(後述)ため、「製作者が生活できるか」は消費者に何の関係もない
「楽にタダで漫画を読みたい」気持ちの消費者が大多数で、その気持ちをどう解決しビジネスを成り立たせるかを考えるのがプレイヤーの使命である。

この辺は下記のエントリでも同じことを書いたので、合わせてご覧いただきたい。
そちらでも引用したが、漫画村の月間ユニークユーザー数は約7000万人で、日本の人口の半分以上だったとされる。

– 漫画村の”凄さ”〜漫画村は一体何がヤバいのか〜
http://www.sm-walker.jp/2018/04/15/01-323/

個人の利益追求が社会全体に利益をもたらす

個人が自分の利益を最大化しようとすると、資源は社会全体で適切に配分される。
人々はお互いの利己心があるからこそ、社会の中で分業を達成することが出来るのだ。

今どき中学生でも知っているアダム・スミスの「見えざる手」である。

価値のある創作物を作るクリエイターは多くの人の利己心を満たし、自らも長期的な創作活動が出来る。
一方で、価値のない創作物ばかり作るクリエイターは適切に市場から淘汰されることで、他の仕事やバイトに従事し社会的な利益を生む。

– 「池上彰のやさしい経済学」 – 第3回 アダム・スミス ~ 「見えざる手」が経済を動かす ~
http://ww1.tiki.ne.jp/~y-mitsu/shakai/keizai_03.html

市場原理を指図するのは無益である

多くの社会主義・共産主義国がうまくいかなかったように、市場を管理するとロクなことにならない。
市場は自然状態が最も良い状態であり、管理されるべきではない。

「クリエイターのために紙の漫画を買え」という消費行動を強いれば、漫画を読まなくなる人が出るだけでなく、「スマホで漫画読めたらいいよね」といったイノベーションが起きる機会を失わせてしまう。
技術的革新が行われないとその産業は生産性が低いままで、他の産業にお客さんが取られ、長期的な創作活動を阻害する可能性もある。

– 社会主義はなぜ崩壊したの?
http://agora-web.jp/archives/2023593.html

何のための「かわいそう!」か

以上、『クリエイターかわいそう現象』がクリエイターを助けるどころか、死に追いやっていることを説明した。
僕がこの現象を見て改めて感じたのは、「目的を意識して考えるのって案外難しいよね」ということだ。

例えば、漫画家の佐藤秀峰氏が自作『ブラックジャックによろしく』の二次使用を無料にし、マネタイズに成功した話は有名である。
紙の漫画を売ることに終止していたらこうはならなかったが、結果として「自分の作品に触れてもらう」という目的を達成している。

– 「ブラよろ」2次使用権フリーで1億円超!電子書籍のフリーミアムに可能性あり
http://sharinglab.info/free/1/

その「かわいそう!」は、一体誰の、そして何のための「かわいそう!」なんだろうね?
この機会に一度考えてみると良いだろう。

目的を忘れることは、愚かな人間にもっともありがちなことだ。
– フリードリヒ・ニーチェ

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