中止が決定したフィンランドでのベーシック・インカム(BI)の実験まとめ

先日、ベーシック・インカム(以下BI)の有望な実験に幕が降ろされた。
今年の12月で、フィンランドでのBIの実験の中止が発表されたのである。

フィンランド政府はベーシックインカムにより失業者の就業意欲が高まることを期待していましたが、新しい制度を導入することを理由に、2018年12月で実験を中断することを決定しました。
– フィンランドの「ベーシックインカム実験」が2018年12月で中断

https://gigazine.net/news/20180420-basic-income-experiment-ending/

フィンランドは、スウェーデンなど他の北欧諸国と同じく社会保障が充実している国の一つである。
35カ国を対象とした国際順位で確認しても、社会保障費の対GDP比が3位、1人当たり社会保障費は9位と世界的に見ても上位であり、その充実ぶりが伺える。
– フィンランドの福祉・社会保障 統計データ
https://www.globalnote.jp/post-2508.html?cat_no=503

そんな社会保障にチカラを入れているフィンランドが、2017年1月からBIの実験をするということで、今回の実験は世界中から大きく注目されていた。
タイミング的にもBIの論調が世界中で高まっていたし、また「フィンランドなら、、」という期待感もあっただろう。

しかし、今回の実験中止の発表である。
ニュースを見る限り、実験中止の理由は「BI導入による本当の効果を見極めることができない」ということで、BIや実験に何かまずいことが起きたわけではなく、そもそも今回の実験システムに色々と欠陥があったからのようだ。

今回の実験中止で「ほら、BIなんてうまくいくわけがない」という単純な帰結にならないよう、また、「じゃあどうすればよかったのか」という振り返りと反省を含め建設的な議論ができるように、実験の中身をあらためて振り返りたい。

フィンランドのBI実験を徹底解剖

フィンランドという国について
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フィンランドはいわゆる北欧に位置する国で、面積は日本より少し小さい33.8万平方km、人口は約550万人で福岡県より10%多い程度。
名目GDPは2,386億USドルで日本の20分の1くらい、1人当たり名目GDPは43,482ドルで日本より高い(笑)です。
特徴的なのは失業率で、全体でも8.6%と高いが、特に若年層(15~24歳)の失業率が22.4%と極めて高い。
– フィンランド基礎データ(外務省データ)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/finland/data.html

給付対象者

フィンランドの国民で、失業者の中から無作為に抽出された2000人

給付金額・内容

施行期間の2017年1月1日から2019年12月末(当初)中、月に約590ドル(約66000円)が給付される。
給付について、受給者が期間中に仕事を見つけたかどうかは関係なく、給付金が自動的に月初に振り込まれる。
– フィンランドが「就職しても受給できるベーシックインカム」を試験導入
https://www.businessinsider.jp/post-176

結果・推移

2018年12月末での実験中止が発表された。
理由としては、先にも紹介した通り「BI導入による本当の効果を見極めることができない」からである。

今回の実験中止について、BI専門家のオリ・カンガス教授からは「このような大きな実験から結論を導き出すのに、2年という期間は短すぎます。信頼できる結果を得るには時間とお金をかけるべきです。」という意見が上がっている。
それ以外にも、ベーシックインカムの支持者たちからは実験発表の当初から「フィンランドの全国民を対象にすべきだ」という主張が見られた。

経過としては、失業者のストレス軽減がみられたと報告されていた。
– フィンランドのベーシックインカム実験、開始4カ月後の変化
https://www.businessinsider.jp/post-33508

懸念・備考

・給付対象を失業者に限定している
・実験期間が1年程度と非常に短い

その他参考にした情報

– 現地ルポ フィンランドがはじめた「ベーシック・インカム」で、人は働かなくなるのか?
https://courrier.jp/news/archives/75154/

所感

この実験について、僕個人の意見としては「極めて中途半端な実験で、これではBIが”良い”か”悪い”かという議論には全く使えない」と言わざるをえない。
社会保障に力を入れているフィンランドであっただけに、非常に残念な結果である。

特に給付対象が失業者に限定されているのは大きな問題だ。
今回は無作為抽出だったために(選ばれなかった失業者との対照実験をしたかったのかな?)それほど大きな問題はなかったが、失業者のみを給付対象にしてしまうと、国民に「就職しない」インセンティブを与えてしまう。

また、2年でBI実験の終了が見えていれば、国民は嫌でも仕事を探すだろう。
実験が終了したら途端に生活できなくなるからだ。
短期間での実施では、このように国民の行動に歪な動機を与えてしまい、本当の効果は見えてこない。

BIは長期的に行うから効果が出るのであって、短期間であればバラ撒きに近い効果しか生まない。
今回のフィンランドの実験は残念であったが、2019年に予定されている実験のデータ公開で、有用なデータがあることを期待したい。

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