漫画村の”凄さ”〜漫画村は一体何がヤバいのか〜

現在さまざまな議論を読んでいる”漫画村”について、リアルでもネットでも人と話す機会があったのだが、
「無料で漫画を見ようとするなんて犯罪者予備軍」
「漫画村は無料だから人気なだけに過ぎない」
「潰してしまえばそれでオッケー」
みたいな、感情論と思慮の浅さの入り混じった、残念な返答が返ってくることが多く、個別に説明するのが面倒くさいので、そのヤバさについて、こちらでまとめて解説しておこうと思う。

その前に前提として、僕は漫画村を擁護するつもりは一切ない
著作権を一方的に無視し、勝手にコンテンツをバラ撒く漫画村は、確実に悪だ。

だからこそ、なぜ漫画村がここまで巨大になったのか、クリエイターや出版社はどうすべきだったのかを理解する必要がある。

①ビジネス的なヤバさ

逆算されたビジネスモデル

当初、漫画村はその圧倒的なPVを活かした広告収入モデルが主になっていた。
そしてユーザを囲い込んだ後、月額で広告ブロックや漫画ダウンロードなどのサービスを利用できる”プロ版”を開始する予定であった。

違法漫画閲覧サイト『漫画村』が月額有料サービス、「漫画村プロ」を発表した。「漫画村プロ」に登録すると全ての広告が除去され、また設定によりアダルト漫画を表示しない設定も可能だという。また漫画をzip形式でダウンロード可能になり、また無料ユーザーとは別の快適なサーバーで閲覧可能。
– 違法漫画閲覧サイト『漫画村』が月額有料サービスを発表
http://gogotsu.com/archives/37708

つまり、漫画村は常にトレンドを見て「どう売るのか」というモデルから設計されたビジネスを展開している。
この時点で、漫画やデータなどのモノありきのバカ正直な商売しか考えられない出版社やクリエイター達にはまず勝ち目がない。

これは、音楽CDが売れなくなったCDショップの苦戦を見れば理解できるだろう。
クリエイター達は、「お金のとり方」をもう一度しっかりと考えるべきだ。
作品そのものを売らなくたって、稼げる方法はいくらでもある。

さらに悲しいことに、漫画村に対抗しようとする時、出版社やクリエイターの多くは「マンガ好きの資格がない!などといった、モラル倫理観を拠り所としていることが多い。
人の感情や倫理観はとても移り変わりやすく、それだけでは仕組みを提供するサービスには対抗できない。

サービス的なヤバさ

スマホ特化されたUI/UX

漫画村で漫画を見てみると分かるが、完全にスマホユーザに特化した設計がされている。
考えてみれば、今時わざわざパソコンで漫画を読むという物好きは少ないだろう。

これは、スマホシフトが進んだ現在のインターネットのトレンドに非常に合っている。

特に漫画を読むページは特筆モノで、そこには他の漫画配信サービスにありがちな「ズームしないと読めない」とか「勝手にコマ送り設定されててウザい」というものは全くない。
ひたすら下にスクロールする、それだけだ。

また、トレントサイトと違い「漫画を読むためにrarやzipファイルを落として解凍する」といった余計な操作も含まない。
スマホだけで、すべての行動が完結する。

漫画村が他のトレントサイトと比較し、圧倒的なPVやユーザを抱えている理由はここにある。
このように、「漫画村は無料だから伸びただけ」というのは明確に間違いである。

参考までに、漫画村のPV数などの数値を貼っておくので、ご覧いただきたい。
この数値は、その辺の違法サイトが叩き出せる数値ではない。

結論から書いちゃうと、漫画村の月間ユニークユーザー数は約7000万人らしい。
日本の全人口の半分以上と表現すると、いかにすごい数であるかが分かるはず。
訪問別ページビューが21ページもあるため、アクセス数に換算するとざっくり毎月14億PVにのぼる計算。
『ONE PIECE』の累計発行部数が3億部後半ですから、うーん。
– 参考:バズマン。より
http://buzz-manga.blog.jp/manga-mura-taiho

漫画への高いアクセス性

また、「漫画村で検索すれば、大体の漫画が読める」というのも大きな魅力である。

出版が提供する稚拙な配信サービスは、当然ながら自社の漫画しか取り扱っていない。
読む漫画ごとにフォーマットもサービスも異なり、さらに会員登録まで要求されるのだからたまらない。

それに、興味のある漫画を”出版社”で把握している人が果たしてどれだけいるだろうか。
一般的ば把握レベルとしては、作品名や作者、せいぜい掲載されいている雑誌ぐらいだろうか。

それでも作品を「出版社」で分類することは、究極的には出版社やサービス提供側のエゴであり、ユーザに対する押し付けとも言える。
ところが、漫画村にはそれがなく、検索窓で作品名や著者を検索するだけで読みたい漫画にたどり着く。

「出版社など関係なく、漫画村なら読める」というのが、1つの価値になっているのである。
これに対抗する場合は、Napstarに襲われた時の音楽業界のように、各社の垣根を越えた新しいサービス(iTunes)に乗り出す必要がある。

技術的なヤバさ

根本的に潰せない

「漫画村が政府に閉鎖された、ざまぁw」と少しでも溜飲を下げた読者が居るのだとしたら、自分を戒めてもらいたい。
ちょっと考えれば分かるが、一サイトを停止させることは可能でも、同様のコピーサイトを作るのは全く難しくない。

事実、管理人が同一人物かはさておき、漫画村が”漫画タウン”として生まれ変わっているようである。

海賊版の漫画を閲覧できる違法サイト「漫画村」が4月11日からアクセスできない状態が発覚したが、「漫画タウン」となって4月12日に復活した(「漫画村」と同じ運営者かはまだ明らかとなっていない)。
「漫画タウン」公式と思しきTwitterアカウントでは「漫画村が漫画タウンとして復活したよ」という宣言と共に「村から町に成長」とツイート。
サイトにアクセスすると「漫画村」とほぼ同じサービスを確認することができた。
– 漫画村、復活か 閉鎖から一転「漫画タウン」にリニューアル
http://kai-you.net/article/52448

他にも下記の点などから、特定のサイトを狙って潰すのは非常に難しく、政府の対応基本的には後手に回ることが予測される。
1.サーバが海外にあると、日本の法律が及ばない
2.ネットワークからシャットアウトにしても、ドメインやIPを変えれば問題ない
3.「何を持って漫画村とするか」を定義することが難しく、政府対策に時間がかかる

そして、そのような終わりのないイタチごっこに政府のリソースをむやみに割くべきではないことは明らかである。
今回のような対策が続く場合は、どこかで調査・追求が打ち止めになるだろう。

上記の技術的対策は基本的なインターネットのノウハウだが、出版社のおっさんや描くことしか頭にないクリエイターに、ここを理解できない人が一定数おり、そのことが局地的な閉鎖による安心をもたらしてしまい、世論としての追求が弱まる可能性もある。

このあたりは、下記のニュース記事がわかりやすく、ぜひ一読をおすすめする。
– 「漫画村」問題:「海賊版サイトブロッキング」はアリかナシか? 問題点はココにある
(https://www.businessinsider.jp/post-165350)

最後に

さて、これだけ書くと漫画村を肯定しているかのようだが、冒頭にも書いたとおり、僕は漫画村の存在は悪だと考えている。
悪ならば、その芽を摘まねばならない。

しかし、悪とは人の中に普遍的に存在するもので、だからこそ排除はむずかしい。

読者の中で、エロ動画をDVDや動画で毎度毎度購入する人がどれだけいるだろうか?
興奮している時に、AV女優やカメラマンに金が入らないことを少しでも考えただろうか?

あるいは、YouTubeでは音楽やゲーム、昔のテレビの動画も全く見ないのだろうか?
スレッドから丸々複製された2ちゃんねるのまとめサイトを見たことは?
施設で勝手に音楽を流したことは?
これらの著作権侵害がないか、きちんと確認した上で利用しているか?

おそらくだが、すべてホワイトな人はこのインターネット社会でほとんど居ないだろう。
しかし、僕は「ほら、お前だって著作権侵害してるじゃん」ということが言いたいわけではない。

僕は「モラルや倫理観を礎にこのような仕組みに立ち向かうべきではない」ということを伝えたい。

漫画村のユーザーは約7000万人、日本国民の半分以上である。
つまり、「できれば漫画に金払わずに、ラクして読みたいなぁ」という感情は、悲しいが、君がAVを無料動画サイトで見るように、普遍的なものなのだ。

仕組みを止めるには、仕組みしかない。
出版社がどこだとか、クリエイターは金儲けを考えるなとか、そんなことを気にしている場合ではないのだ。

このままでは、著作権という船そのものが沈んでしまいかねない。
そうなる前に何もせず、船の上でああだこうだ議論するのか、舵を取るのかは、製作者次第である。

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