サルでもわかる『EV(電気自動車)の受難』〜なぜEVは普及しないのか〜

本ブログでも電気自動車(以下EV)について何度か取り上げているが、今回改めて論じたいのは、EVに関する受難論である。
僕は各エントリで記載の通り、EVが持つ革新性に大きな期待を寄せている。

(参考エントリ)

-【テスラ・トヨタ】現在の自動車業界の戦略を俯瞰してみる
(http://www.sm-walker.jp/2017/09/02/01-275/)

-電池競争を制した者が、自動車業界の覇権を握る
(http://www.sm-walker.jp/2018/02/12/01-312/)

-議論の中でバズワードと化す「EV」
(http://www.sm-walker.jp/2017/09/18/01-280/)

しかしその一方で、”トヨタ終焉”や”テスラ神格化”など、最近のEVに対する過度な期待についても疑問を持っている。
本日はそれについてEVのもつチカラを整理しながら、一言二言書いていきたいと思う。

なぜEVが騒がれるのか?

まずは、「EVのもつチカラの本質とは何か?」という話をもう一度整理したい。

結論から言うと、”自動車メーカー間の競争を激しくし、市場を適切な状態にすること”である。
より簡単に言えば、”クルマが安くなること”でもある。

クルマのボンネットを開けてみれば分かるとおり、自動車は高性能な部品が多数組み合わさってできている。
各自動車メーカーはこれらの膨大な数の部品を調達・検査・組立し、自動車という製品を作り上げているのだ。

そのために、自動車メーカーには桁外れのノウハウ・資金・設備が必要とされる。
つまり、自動車業界への参入は容易ではないのだ。

10年前と比較して、自動車メーカーの顔ぶれにさほど変わり映えがないことからも、その様子は理解できるだろう。

これは言うなれば携帯キャリア業界(Docomo・KDDI・Softbank)と同じ”寡占(かせん)”という、ちょっとおかしな状態なのだ。
寡占状態にある市場では、各社の価格が横一線で下がらない、製品のバラエティが乏しくなる、などの弊害がもたらされる。

寡占(かせん、英: oligopoly)とは、市場の形態の一つで、ある商品やサービスに係る市場が少数の売り手(寡占者、寡占企業)に支配されている状態のこと。少数が1社だけである場合は独占、2社ならば複占という。このような市場では売り手側の参加者は事実上少数なので、寡占企業はそれぞれ、他の寡占企業の動向に影響を与えることができる。
-寡占 Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AF%A1%E5%8D%A0

さて、もしEVの技術が一般的になれば、この構造に風穴を開けることができる。
クルマに必要な部品数が圧倒的に少なくなり、自動車業界への参入障壁が下がるからだ。

理論上は、ラジコンやミニ四駆ぐらいまでは減らせるだろう。
なぜなら、ラジコンもミニ四駆も問題なく動いているからである。

こうなれば、自動車は現在のPCやスマホのように、メーカー間での値下げ攻勢や差別化戦略が顕著になる。
このような製品市場の変化を”コモディティ化”という。一度は聞いたことがあるだろう。

コモディティ化とは、市場参入時に、高付加価値を持っていた商品の市場価値が低下し、一般的な商品になること。高付加価値は差別化戦略のひとつで、機能、品質、ブランド力などが挙げられるが、コモディティ化が起こると、これらの特徴が薄れ、消費者にとっての商品選択の基準が市場価格や量に絞られる。
-コモディティ化
(https://www.synergy-marketing.co.jp/glossary/commoditization/)

EV普及の落とし穴

さて、Mr.昭和マン達の憧れであるクルマが、もっと安くなるという夢の様な話をしたが、そうは問屋が卸さない。
EVの普及にはいくつもの課題が存在し、それらしい解決策が見つかっていないからだ。

①充電時間が長い

以前別のエントリでもこの図を利用した。

現状、急速充電でも30分前後の時間が必要で、ガソリンとは比べ物にならない。
この課題に対し、充電スタンドでは電池交換を行う”交換式EV”というソリューションが提示されたが、メーカー間の規格や性能差などの問題が山積みである。
-電池パック交換式EVは顧客満足を得られず、ベタープレイスが会社清算へ
(http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1305/27/news072.html)

②莫大なインフラ投資
当たり前だが、ガソリンスタンドを置き換える設備投資を再度実施する必要がある。
それを誰がどのように負担するのか、未だ明確ではない。
さらに、途上国でも同様のインフラ投資が実施できるかは不透明である。

③電池原料の逼迫
電池を構成する主要素材である”リチウム”はオーストラリアが、リチウムの性能を補助する”コバルト”はコンゴ共和国が、それぞれ圧倒的シェアを握っていて、埋蔵国や産出国に大きな偏りがあり、価格や供給量の激しい争いが予想される。
当然、そのコストは最終的にユーザが負担する。

-世界のリチウム生産量 国別ランキング・推移
https://www.globalnote.jp/post-3108.html
-世界のコバルト生産量 国別ランキング・推移
https://www.globalnote.jp/post-1892.html

④エネルギー問題
”EV”か”非EV”かという違いは、突き詰めれば「どこで電気を作るか」という違いである。
つまりEVに関して、そのコストは国のエネルギー政策が大きく左右する

例えば、日本では高価で環境破壊リスクの高い火力発電がメインであるため、EVが普及すれば思わぬリスクやコストが発生する可能性がある。残念ながら、原子力発電を増やすオプションが取られることは、政局的におそらく無いだろう。

-発電方法の比較
(http://xn--hckxanc0izg7azd0de.com/about/hatsuden.html)

また、途上国では停電が日常茶飯事である国は多く、そもそも電力を安全供給できる状態にすらない国がほとんどである。

最後に

さて、EVのネガティブな部分をさらけ出したが、僕はそれでもEVの可能性を信じている。
EVには、もっと色んなクルマがもっと多くの人の手に届くようになり、より多くの地域へ簡単にアクセスできるようになる未来を実現してもらいたい。

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