【読書録】『林檎の樹の下で アップルはいかにして日本に上陸したのか 』-著:斎藤由多加

たかだかできて2,3年のベンチャー企業から、”この東レ”が何を輸入すると言うんですか。

今回は、アップルが日本に上陸した時の話をまとめた『林檎の木の下で』を紹介したい。
僕は知らなかったのだが、この『林檎の木の下で』は、元々1996年に発刊されていたそうで、その復刊ということになる。

アップルが日本に上陸する時の血なまぐさい逸話をまとめたノンフィクション、ということになるのだが、あまり数が出なかったのか、元の本にはプレミア的な価値がついていて、マニアの間では高値で取引されているものらしい。

しかし、マニア本にしておくにはもったいない素晴らしい内容だったので、『林檎の木の下で』の読者であった堀江貴文氏が発起人となって、新たに生まれ変わらせたのが今回の新刊である。

復刊にあたっての面白い試みとして、文庫とコミカライズの融合という形を取っている。
コミカライズを担当したのは、これまたアップルの歴史を漫画にした『スティーブス』の著者である漫画家ユニットのうめ氏だ。

コミカライズのおかげで、本を読み進めるスピードが飛躍的に向上させられており、登場人物やシーンのイメージを膨らませるのに一役買っている。
情報メディアとしての本の弱点として、『時間効率が悪い』と言うものがあるが、今後はこのような形で、その弱点が補われていくのかもしれない。
(本を作るのに余計カネがかかりそうだけど)

さて、肝心の中身についてだが、これがまたこの試み以上の面白さだ。
現在のアップルのイメージとはかけ離れた、泥臭い話の連続である。

例えば、アップルのPCが日本で大きく普及するために必要不可欠であった”日本語化”に、あのアップルが死ぬほど手こずっている。

何故かと言うと”文字コード”という、0と1しか理解できないコンピュータで言語を表記するための技術で、日本語を扱うことが非常に難しかったからである。
英数字のみと比較すると、倍以上のCPUが必要となってしまい、当時のアップルコンピュータはそのようなパワーを持ち合わせていなかったのだ。

2バイト文字とは、文字コードのうち、1文字を2バイトで表現する文字の総称である。
コンピュータにおいて、データは1バイトで256通りの情報を表現することができる。
英語のアルファベットのような言語は、1バイトで充分に表現することができる。
しかし、漢字のような言語は種類が膨大であるため、256種類では足りない。
そのため、文字を表現するためにデータを2バイト利用し、256の2乗である65536通りの情報を表現可能とすることによって、実用的なレベルの文字表現を実現している。
-IT辞書バイナリ『2バイト文字』
(https://www.weblio.jp/content/2%E3%83%90%E3%82%A4%E3%83%88%E6%96%87%E5%AD%97)

今でこそ、僕は何の苦労もせずMacbookでこの記事を書くことができるが、それは決して当たり前のことではなかったのだ。

また、アップルジャパン社が立ち上がるまで、『東レ』や『キヤノン』などの日本の大企業と手を組んで流通させようとしていたところも意外であった。
(冒頭のセリフは、東レがアップルプロジェクトに関わった際に、東レ社員が言い放った言葉だそうだ)

欧米と日本の商習慣の違いやアップル本社のサポートの稚拙さもあり、どれもこれも上手く進まない。
さらには、強烈なカリスマであるスティーブ・ジョブズに振り回される始末で、血まみれになっていく日本市場の様が克明に描かれている。

今やその血の跡を一滴も残していないアップルであるが、今後の社会の変革の中で、もう一度血で血を洗う覚悟があるかどうか。
それは、また遠い先の未来で語られるであろう。

林檎の樹の下で アップルはいかにして日本に上陸したのか

<概要>
若きジョブスと翻弄される日本人たち…アップル日本進出を巡る壮絶なドラマが始まる。
<著者>
斎藤由多加
1962年東京都生まれ。
ゲーム・クリエーター。シーマン人工知能研究所所長。
大学卒業後、リクルートに入社し、その後独立し1994年「オープンブック株式会社」を創業。
高層ビルシミュレーション『タワー』の国内外のヒット(海外名はSimTower)で全米パブリッシャーズ協会賞ほか受賞。
1995年、日経BP社ベンチャー・オブ・ザ・イヤー最優秀若手経営者部門賞。
1999年、『シーマン 禁断のペット』をドリームキャスト向けに発売。
文化庁メディア芸術祭優秀賞、米国GDC年間キャラクター賞など受賞多数。

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