【読書録】『美貌格差: 生まれつき不平等の経済学』-Daniel S. Hamermesh著

当ブログで新年1発目を飾るにふさわしい、とても真面目な本をご紹介したい。
それが、この『美貌格差: 生まれつき不平等の経済学』である。

所感

さて、「面白い本だが、色々と惜しい!」というのが、僕の素直な感想だ。

全体の概論としては「美人はどれだけ得か?(≒ブサイクはどれだけ損か?)」ということを、仕事や年収、あるいは寄付などといった社会生活における様々な活動の視点から分解し、主張あるいは費用の算出を試みる。

1ページに何度も”ブサイク”という単語が出てきたり、”ブサイク・ペナルティ”や”美人・プレミアム”といった容赦ない言葉が小気味よく踊り、作品全体のバカさ加減・真面目さのバランスがちょうどいい。
読み手を選ばない本である。

まずは、的はずれな批判や心無いヤジが飛ぶであろう研究を長年続けてきた著者、そしてこの本を出版し、あろうことか和訳での発売を決定した出版社や編集者について、僕は敬意を表したい。
なぜなら、他の人が言いにくいことには”物事の本質”が秘められていて、それを解明することは学問、ひいては社会全体に大きな利益をもたらすからである。

内容

それでは、具体的に中身を見ていきたい。
ポイントは2つだ。

①ブサイクと美人との格差はあらゆる面で埋めがたいほど大きく、ブサイクについては政府の保護すら必要
②この本を読んだからといって、美貌格差について何かが解決するわけではない

1つずつ見ていこう。

①は美貌格差について、さまざまな分析や実験の結果を用いて、その本質に迫ろうとする。

著者が経済学の中で”労働経済学”が専門ということもあってか、労働や企業における格差について取り上げることが多い。
「化粧や衣服が見た目の点数に与える影響は誤差程度」などの、面白い研究結果が多く、ブサイクであることのペナルティを痛烈に書き上げる。

少し残念だったところは、「そもそも見た目の良し悪しをどう決めるか」という問題である。

著者自身も、そのことを理解しているのであろう。
見た目の良し悪しの決定について、本著の20%以上のページ数を割いているが、かなり便宜的な手段(5段階で点数を付ける)を取らざるを得なかった。

もっとも、全ての人間に対し共通の美の物差しを当てはめることは難しい、というかおそらく不可能なので、ここを責めても話が始まらない。
コレに対し非難を浴びせるAmazonのレビュアーには、ぜひ対案を示してもらいたいところだ。

②についてだが、「じゃあ、ブサイクな僕達私達はどうすればいいの?」という解が存在しないことだ。

これも少し残念な部分である。
身体障害などの例を持ち出し、ブサイクを政府による保護すら肯定する著者であるが、ミクロな主体(個人)が取るべき選択を示すことは残念だができていない。

そして、これはそもそもの問題だが、「ブサイクより美人の方が得であることは、既に自明のものだ」ということもある。
既に明らかな説を掘り下げるのであれば、その解決策を世のブサイク達に示してあげる優しさぐらいはあっても良かったかもしれない。

見た目はもちろんだが、人は心までブサイクになってはいけないのだ。

美貌格差: 生まれつき不平等の経済学

<概要>
見た目で生涯年収の差は2700万円?!
ブサイクな人は保護されるべき?
着るものや化粧、整形手術に効果はない。
企業業績、選挙の結果、融資の条件、寄付金集めにも影響。
労働経済学の権威が20年かけて解明した「衝撃の真実」。

<著者>
ダニエル・S・ハマーメッシュ
テキサス大学オースティン校教授
テキサス大学オースティン校で経済の基礎に関するスー・キリアム寄付講座の担当教授、オランダのマーストリヒト大学では労働経済学の担当教授を務める。
著書に『労働需要(Labor Demand)』、『どこでも経済学(Economics Is Everywhere)』などがある。

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