【読書録】『フェルマーの最終定理 (新潮文庫)』-サイモン・シン著

数学の核心は証明にある。
そして証明こそは、数学と科学の他の分野とをきっぱり分かつものなのだ。
数学以外の科学分野ではまず仮説を立て、実験によってそれを検証する。
そして仮説の誤りが示されれば、別の仮説がそれに取って代わる。
しかし数学においては、完全な証明こそがゴールである。
一度証明されるということは、永久に証明されることなのだ。
-『序』ジョン・リンチより引用

テクノロジー・ノンフィクションの金字塔『フェルマーの最終定理』を読んでみました。
著者のサイモン・シンは、この本で作家デビューを果たし、その後『暗号解読』や『ビッグバン宇宙論』などの極めて評価の高いテクノロジー作を世に残していくことになる。

『暗号解読』に関しては、先んじてレビュー済なので、そちらもぜひ読んでいただきたい。
-【書評】『暗号解読<上・下>(新潮文庫)』サイモン・シン著
http://www.sm-walker.jp/2017/02/25/01-225/

さて、作家としてのサイモン・シンの特徴は、『数式を言葉で翻訳して表現できる』というところだ。
テクノロジーの技術的な話をしようとすると、どうしても数式や文字列を並べる必要があるのだが、サイモン・シンはそれを可能な限り排除している。
これにより、テクノロジーを楽しむためのハードルが格段に下がるのである。

フェルマーの最終定理について

本著でも言及されているとおり、フェルマーの最終定理の魅力は「一見するといかにも簡単そうに見えること」にある。


(引用:フェルマーの最終定理 350年越しの数学ドラマ 2/3

昔学校で習った、直角三角形の面積を求める公式を覚えているだろうか?
ほぼアレと同じ数式である。

通常、数学における未証明の定理やら公理は「そもそもそれ自体が難解である」ことがほとんどのはずだ。
しかし、このフェルマーの最終定理は小中学生でも理解できるものだ。

にもかかわらず、この定理は300年以上も未証明だったのだ。
それにフェルマーが”証明できる”と一言、本の余白に付け加えたことが、数多の数学者を夢中にさせたのである。

不屈の天才 アンドリュー・ワイルズ

この本は、フェルマーの最終定理に挑む一人の男「アンドリュー・ワイルズ」の目線を主軸として進行される。

彼は、小学生の時に図書館でフェルマーの最終定理に出会ってから、ずっとその魅力の虜になっていた。
その証明の中で、時に孤独と、時に自らの間違いと戦いながら、少しずつ核心に迫っていく。

ぶっちゃけ300年以上も解決されていない問題に、一人で真正面からバカ正直に突っ込んでいくこと自体、おかしなことは間違いないのだが、世の中とはそういう人間によって塗り替えられていくのだ。

個人的に感動したのが、偉業を成し遂げたワイルズの発言だ。

大人になってからも子供のときからの夢を追い続けることができたのは、非常に恵まれていたと思います。
これがめったにない幸運だということはわかっています。
しかし人は誰しも、自分にとって大きな何かに本気で取り組むことができれば、想像を絶する収穫を手にすることができるのではないでしょうか。
この問題を解いてしまったことで喪失感はありますが、それと同時に大きな解放感を味わってもいるのです。
八年間というもの、私の頭はこの問題のことでいっぱいでした
──文字どおり朝から晩まで、このことばかり考えていましたから。
-『大切なもの』アンドリュー・ワイルズの発言内容より

やはり、こういった熱意没頭する力を持つ人が、大きなことを成し遂げるのである。
その本質は、時代が移ろうとも変わらない。

フェルマーの最終定理 (新潮文庫)

<概要>
17世紀、ひとりの数学者が謎に満ちた言葉を残した。
「私はこの命題の真に驚くべき証明をもっているが、余白が狭すぎるのでここに記すことはできない」
以後、あまりにも有名になったこの数学界最大の超難問「フェルマーの最終定理」への挑戦が始まったが――。
天才数学者ワイルズの完全証明に至る波乱のドラマを軸に、3世紀に及ぶ数学者たちの苦闘を描く、感動の数学ノンフィクション!
<著者>
サイモン・シン
1967年、イギリス生れ。祖父母はインドからの移民。
ケンブリッジ大学大学院で素粒子物理学の博士号を取得し、ジュネーブの研究センターに勤務後、英テレビ局BBCに転職。
TVドキュメンタリー『フェルマーの最終定理』(’96年)で国内外の賞を多数受賞し、’97年、同番組をもとに第1作である『フェルマーの最終定理』を書き下ろす。
第2作『暗号解読』、第3作『ビッグバン宇宙論』(以上新潮社刊)がいずれも世界的ベストセラーとなり、科学書の分野で世界トップクラスの高い評価を得ている。

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