ベーシックインカム(BI)の実験結果「労働意欲に影響なし」

イランで6年間行われていた、ベーシック・インカムの導入結果が発表された。
ニュースによると、懸念されていた”労働意欲の減退”などは起こらなかった、ということである。

こういった先進的な取り組みには効果予測という観点で、それなりに明確な根拠がなければ色んなところから文句が出るものなのだ。
そういう意味で、今回のイランでの研究結果は、今後のベーシックインカムの議論を進めるにあたって、非常に大きな意味を持つだろう。

今回の研究内容のポイントは下記のとおり。
・支給額は国民平均収入の29%にあたる1日1.5ドル(約170円)で、アメリカの平均年収で1万6000ドル(約178万円)程度
・対象者の条件などはなく、すべての国民に無条件で現金の支給を行う
・労働需要に大きな影響は見られず、一部の分野では事業拡大の効果もあった

特に支給額はかなり重要で、年収約178万円は”ベーシック”として絶妙な基準であると考えて良いだろう。
もちろん、実施する国の経済状況や家計の実態を鑑みて、支給額や支給方法は修正・改善されるものと思われる。

実際、ベーシックインカムはベーシックな金額だからベーシックインカムなのであって、生活にある程度必要とされる金額しか提供されない。
なので、35年ローンで家を買ったり、そんなに乗らない新車を買ったり、子供を何人も私立大学にいれたり、大型連休に毎年夫婦で海外旅行をしたりするような超贅沢な生活をベーシックインカムだけで賄うのは不可能なはずだ。

普通に考えれば生きていく上でそんなものは必要ないのだが、消費行動に対する、世間体や見栄といった意味不明な動機は極めて強い。
であれば、ベーシックインカムを上回る所得を得るために、労働を行う層は一定数いるものと思われる。

もちろん、自らの消費行動を改めベーシックな生活を送るために、仕事を放棄する者もいるだろう。
そして、それ自体は決して悪いことではない。

現在の時点で、やる気のない人間をカバーするために失われているワーカホリック的人間の労働は、ミクロとマクロの両方の観点で、少なからず存在するはずだ。
ベーシックインカムの導入によって、やる気のない人は嫌々仕事をする必要がなくなるし、バリバリ働きたい人にとってはじゃまな人間が減ることになり、双方にとって望ましい状況を生まれるだろう。

結果、先日報じられたような熱意のない社員は、ベーシックインカムの導入により、ある程度自然に淘汰することができるのではないだろうか。

ここで重要なのは、淘汰といっても失業して貧困に陥るわけではないことだ。
イランと同じ条件でベーシックインカムが導入されれば、親2人と子供2人の4人家族で年収720万円程度となる。
家族4人が暮らしていくには十分な所得である。

逆に考えれば、それ以上の生活がしたいのであれば、淘汰されない水準の成果が必要となるわけだが、本来はそのような状況が普通であるはずだ。
たまたま儲かっている会社にひたすら長く居ればそれを達成できてしまった、今までの異常な事態をようやく抜け出すことができるのかもしれない。

◾️11月2日追記
BIのメリットについて、簡単にまとめた記事を書きました。
こちらもご参考あれ。
-サルでも分かるベーシック・インカム(BI)の効果
(http://www.sm-walker.jp/2017/11/01/01-288/)

■1月8日追記
BIの本質とは何か?
誰もが気になる内容を書いてみた。
-ベーシック・インカム(BI)その本質
(http://www.sm-walker.jp/2018/01/08/01-304/)

■3月17日追記
過去に行われた他のBIの実験についてもまとめてみました。
-過去のベーシック・インカム(BI)の”実験データ”一覧【近現代編】
http://www.sm-walker.jp/2018/03/17/01-318/

働かなくてもお金がもらえる「ベーシックインカム」を導入しても労働需要に影響はないことを示す研究結果

<概要>
イランでは2011年に石油・ガス補助金が大幅削減された代わりに、国民平均収入の29%にあたる1日1.5ドル(約170円)を雇用状態にかかわらず、現金で支給するという制度が導入されました。
アメリカの平均年収でいうと、毎年1万6000ドル(約178万円)が無条件で支給されるというものですが、導入から6年が経過したイランで、労働力にどんな影響があったのか、ということを経済学者のDjavad Salehi-Isfahani氏、Mohammad H. Mostafavi-Dehzooeifrom氏らが調査した結果を報告書にまとめています。
調査は現金補助制度が始まる前年(2010年)と翌年(2011年)の家計収入の遷移と、同年の労働状況を比較という手法がとられました。
使用されたデータはイランの公式データを取り扱うイラン統計センター(SCI)で集められたもので、調査の結果、現金補助制度がイランの労働需要に影響を与えたことを示す証拠はほとんどすべての世代で発見されず、かえってサービス業界のような職種では従業員の労働時間が増加し、事業拡大につながったという結果も出ているとのこと。
一方で、主に20代の若者の労働時間は減少するという結果が見られましたが、イランでは現金補助制度が確立する以前から若者の雇用状況は良くなかったそうです。
20代の若者の労働時間が減少したのは、現金補助という追加収入を進学に充てたためと考えられています。
研究者は「この研究が示したのは、『現金補助を主張することは貧しい人々を怠け者にする』と考えられている問題に対して、次なる研究に役立てられるより良いデータを残したということです」と話しています。
http://gigazine.net/news/20170602-basic-income-iran/

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