【読書録】『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』-ユヴァル・ノア・ハラリ著(河出書房新社)

人類はあっという間に(食物連鎖の)頂点に上り詰めたので、生態系は順応する暇がなかった。
そのうえ、人類自身も順応しそこなった。地球に君臨する捕食者の大半は、堂々たる生き物だ。
何百万年にも及ぶ支配のおかげで、彼らは自信に満ちている。
それに比べると、サピエンスはむしろ、政情不安定な弱小国の独裁者のようなものだ。
私たちはつい最近までサバンナの負け組の一員だったため、自分の位置についての恐れと不安でいっぱいで、そのためなおさら残忍で危険な存在となっている。
-『1章.唯一生き延びた人類種』 より引用

話題沸騰(ちょっと遅い)の人類史書、読んでみた。
2016年の秋ぐらいには日本でも和訳版が出版されかなり話題になっていたようで、この辺の情報キャッチがまだまだ甘いなぁ、と感じるこの頃。

さて、上下2巻構成の分厚いこの本が、なぜそんなに話題になっているのかというと、多数の著名人、それもビジネス方面の成功者で「面白い」と公言する人が多いからだ。
Facebook創業者のマーク・ザッカーバーグに至っては「2016年の1冊」とまで言っちゃうほど。

マーク・ザッカーバーグ氏(フェイスブック創業者)
「この世の謎を解き明かしてくれる知的冒険の書だ」
ビル・ゲイツ氏(マイクロソフト創業者)
「人類の未来が気になっているすべての人に薦めたい」
バラク・オバマ氏(元アメリカ大統領)
「私たちが驚くべき文明を築くことを可能にした核心が語られている」
堀江貴文氏(元ライブドアCEO)
「僕が繰り返し言っていること(として高く評価)」
山海嘉之(人工知能工学者)
「長い人類の歴史をふまえたうえで未来を考えることの大切さを学んだ」
-NHKニュース 『世界のリーダーが注目 人類250万年の旅』 より引用
https://www3.nhk.or.jp/news/business_tokushu/2016_1222.html

う〜む、そうそうたるメンバーである。

他にも、恋愛工学で有名な藤沢数希氏もどうやら読んでいるようで、わざわざメルマガで感想をアウトプットするなど相当な盛り上がりようである。
公言していないだけで、他にも読んでる人は相当数いると思われる。

世界史を研究しているハラリ教授の『サピエンス全史』は、僕が取り立てて紹介しなくても、すでに世界的なベストセラーになっている大変に興味深い人類史の本だ。
日本でも昨年の秋に翻訳が発売され、多くの識者に絶賛され、すぐにベストセラーになった。
発売から2年ちょっとで、もはや古典となったと言ってもいい本である。
これは我々のコミュニティでも、ぜひとも読むべき本だと思っていたのだが、1月はずっと品薄状態だったので、大増刷がかかり、Amazonの在庫が安定するまで紹介するのを待っていた。
-『週刊金融日記 第251号 サピエンス全史と生物学的欠陥で滅亡しつつある人類、他』より引用
http://blog.livedoor.jp/kazu_fujisawa/archives/52102581.html

(2017年4月7日現在)、嫉妬とヘイトとステマばかりのAmazonの商品レビューでも平均4.5点の高評価だ。
普段Amazonをよく使う人ならわかると思うが、これは相当すごいことである。

なぜこの本がここまで高い評価を得るのであろうか。
少し中身に触れることで、その理由を紐解いていきたい。

本著の特徴

他にも人類史の本や研究論文はいくらでもあるのに、なぜこの本が取り分け多くの人に愛されるのか。
(他の人類史系の文章はほとんど読まないが…)

とてもつまらない言葉で結論から言うと、「すごく納得できる」からだ。
「なんだそんなことか」と思うかもしれないが、人類史ではその”納得感”を与えるのが非常に難しいのである。

まず、科学的アプローチで人類史を完全に紐解くのは(現在の技術では)およそ不可能である。
これは少し考えれば分かるが、人類史や歴史において、科学的アプローチを行うための材料は、古いものであればあるほど残っていない。

では、人類史を紐解くのに大切なものは何か。
それは「足りない情報をイメージで補填すること」である。
少し横文字を入れるとかっこよく見えるが、誤解を恐れずに言えば”妄想”だ。

といっても、ただの妄想にカネを出すヤツなど居なくて、妄想は何らかの証拠に、ある程度裏打ちされるものでなくてはならない。
バラバラで断片的な情報から、当時の状況(当然、現代社会の通念や常識とは相容れないことが多い)や時代推移などを踏まえ、情報の空白を埋めていく必要がある。

”妄想”は大衆のチカラを得れば、”虚構”となる。
この”虚構”が、本著『サピエンス全史』の強さであり人気の秘密と言える。

サピエンス最強の武器”虚構”

さて、予定調和のように話が向かった本書の一番のポイントであるサピエンスの武器”虚構”について。

このあたりは、僕なんかよりももっと深く考察してる人がたくさんいるので、さわりだけ。

この本の中身についてまとめれば、とにかく「人類の発展は”虚構のチカラ”のおかげだ」ということだ。
実際、堀江貴文氏もメディアでこの本について語るときはこの”虚構”の話をすることがほとんどである。

では、”虚構”とは何か。
それは”この世に物理的に存在しないもの”だ。

サピエンスはこの”存在しないもの”を語ることができたおかげで、生物の食物連鎖のヒエラルキーの頂点に上り詰めたのだ。

なんじゃソレ、と思った人は自分を取り巻くものに関して考えてみれば、この世界・社会は、”虚構だらけ”であることに気づくはずだ。

君がヒーコラ言いながら稼いでいる”お金”なんて、厳密にはこの世に存在しない。
紙幣や硬貨は、信用を具現化させ、物々交換をスムーズにさせるものにすぎない。

君がヘーコラ言いながら勤めている”会社”も、この世には存在しない。
存在するのは、役所に提出された紙ペラの「登記」と「銀行口座」と「偉そうな建物とおっさん」である。
存在しないけど、便宜上あるようにみせるため、「法人」という言葉まであるのだ。

今僕は例えとして”お金”や”会社”を挙げた。
両方共この世に存在しないにもかかわらず、多くの人々がその”虚構”のためにを燃やしている。
(残念なことに、中には燃え尽きてしまう人もいる)

この「見ず知らずの数千・数万という人間を、一つの目的に向かう協力関係に作り上げる」ことを実現できるのが”虚構”のチカラである。

サピエンス以外の生物は、せいぜい家族とか群れでしか協力できなかったのだ。
それを、人類は”虚構”のチカラを用いて、桁外れの規模で行うことを実現させたのだ。

では、それで人類は、いや私たちは幸福になったのだろうか。
それはまた、別の議論である…

私たちはかつてなかったほど強力だが、それほどの力を何に使えばいいかは、ほとんど見当もつかない。
その結果、私たちは仲間の動物たちや周囲の生態系を悲惨な目に遭わせ、自分自身の快適さや楽しみ以外はほとんど追い求めないが、それでもけっして満足できずにいる。
 自分が何を望んでいるかもわからない、不満で無責任な神々ほど危険なものがあるだろうか?
-『あとがき.神になった動物』 より引用

サピエンス全史 上下合本版 文明の構造と人類の幸福

<概要>
国家、貨幣、企業……虚構が他人との協力を可能にし、文明をもたらした!ではその文明は、人類を幸福にしたのだろうか?
現代世界を鋭くえぐる、40カ国で刊行の世界的ベストセラー!

<著者>
ハラリ・ユヴァル・ノア
1976年生まれのイスラエル人歴史学者。
オックスフォード大学で中世史、軍事史を専攻して博士号を取得し、現在、エルサレムのヘブライ大学で歴史学を教えている。
軍事史や中世騎士文化についての3冊の著書がある。オンライン上での無料講義も行ない、多くの受講者を獲得している

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