【読書録】Fintech(フィンテック)-柏木亮二 著(日経文庫)

(前略)
2011年のことです。
私はアメリカで急成長しているPFM(個人資産管理のクラウドサービス)についてのレポートをまとめ、金融機関の人たちに紹介してみました。
ところが多くの人はPFMのことをほとんど知りません。
さらに返ってきた反応は「若い人たち向けのサービスは儲からないんだよね」「機能的にたいしたことないね」「このサービス導入すると利益率の高い商品(投資信託など)が売れなくなるかも」といったものでした。
 この反応を聞いたとき、私の脳裏にある本のタイトルが浮かびます。
 「イノベーションのジレンマ」
-柏木亮二『フィンテック』#おわりに より引用

Fintechに関する技術や話題を網羅した、教科書的な良著だった。

Fintechについて、会社にいるアホな上司に説明ができる構成になっており、具体的なアプリケーションや企業を挙げ、利用するイメージをしっかりと与えながらFintechの衝撃について説明してくれる。

Fintechをここまで網羅し、かつわかりやすい説明をしてくれる書籍は他になかなか無く、Fintechの勉強をしたければとりあえず読め的な位置づけの書籍であることは間違いないだろう。

細かい説明や内容については本著を読んでくれというほかないが、それではこのエントリを書いた意味が無いので、フィンテックに関して少しばかり個人的な意見を述べてみる。

昨今はフィンテックバブルと言ってもいいほど、フィンテック躍進が目立っている。

ベンチャー企業の資金調達や、既存の金融機関のフィンテックへの取り組みのプレスリリースは後を絶たない。

マネーツリーは、2015年「シリーズA」で出資したメガバンク系ベンチャーキャピタルのみずほキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、セールスフォース・ドットコムの投資部門であるセールスフォースベンチャーズに加え、SBIインベストメント、ふくおかテクノロジーパートナーズ、広島ベンチャーキャピタル、池田泉州キャピタルと、英国大手運用会社であるベイリー・ ギフォード・アンド・カンパニーより総額10億円を超える出資を受けたことを発表した。今回のリードインベスターは、SBIインベストメントであることも明らかにしている。
-マネーツリー、SBIインベストメントなどからの資金調達を発表 – 総額10億円
(http://news.mynavi.jp/news/2017/03/21/174/)

みずほフィナンシャルグループは13日、みずほFGと傘下のみずほ銀行がビッグデータ解析のメタップス、ベンチャー支援組織のWiL(東京・港)と金融・IT(情報技術)を融合したフィンテックに関する協議を始めたと発表した。
フィンテックを活用した新たな決済サービスの提供を目指す。

新たな決済サービスはスマートフォンに適した方法にする。
入出金データの解析をもとに個人顧客に資産運用の詳しい助言をしたり、法人向けに事業拡大を支援したりする仕組みづくりを進める。
インターネット上で取引記録を共有して相互認証する技術で仮想通貨などにも使われる「ブロックチェーン」を使った決済手段の構築も目指す。

事業提携で生み出す新たな技術はアジア市場でも展開し、各地域の特性に応じたサービスにしたうえで事業の拡大を図る。
-みずほFG、フィンテックで新興2社と提携協議を開始
(http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL13HM1_T11C16A0000000/)

このフィンテックの熱狂ぶりはどこから来るのだろうか。

もちろん、一番の理由は「儲かるから」に他ならない。
本著の中でも、金融業界を破壊せんとするのは、2014年の「世界の金融機関の利益が1兆ドル以上」という大きなお金を狙っている、としている。

それはまず間違いないだろう。

しかし、いつまでも変わらない金融業界を破壊する、ある種の”気持ちよさ””快感”も大きいのではないか、と思うのである。

金融業界にテクノロジーやITの力が持ち込まれて久しいが、業界の本質はほとんど変わらない。
せいぜい事務処理が楽になったり、金融商品の高度なリスク計算にコンピュータを用いるぐらいだ。

いつまでたっても現金はなくしてくれないし、海外にカネを送るだけで高い手数料をとる。
ポイントカードだって無限に増殖するし、詐欺は一向になくならないのだ。

変えること、変わることの勇気を放棄した種は淘汰される。
それはすなわち、絶えず変化する状況に対し、変革・革新を行なってきたもののみが生き残るということ。

これらは歴史生物学に裏打ちされた、この世の普遍的な真理である。

つぎは金融、あんたの番が来たのだ。
自分で変わらないのなら、他のヤツが変えてくれるだろう。

フィンテック (日経文庫)

<概要>
ブロックチェーン、レンディング、PFM、
API、仮想通貨、クラウド会計、トークナイゼーション
ロボアドバイザー、アグリゲーション、インステック……
この1冊ですべてがわかる!

既存金融機関は「イノベーションのジレンマ」を脱することができるか?
新時代を生き残るための必須知識!

本書の内容
話題のフィンテックについて、その全体像をわかりやすく解説。
なぜ注目を集めているのか、これからの金融ビジネスにどのような影響を与えるのか、
新技術の概要や規制のあり方についてなど、幅広くまとめました。

進化に沿って解説
本書ではフィンテック1.0から4.0まで、その進化の段階に沿って整理しています。
これからどんな競争が引き起こされ、金融全般のビジネスモデルがどう変わっていくのかが
理解しやすい構成になっています。

こんな人におすすめです
金融関係者はもちろん、新規参入を目指すベンチャー企業、
金融システムを提供するITベンダー、
規制について考える政府や行政機関の方々におすすめです。

第一人者が執筆
著者の所属する野村総合研究所は、アメリカンバンカー誌が選ぶ「フィンテックランキング」
トップ10に入る先端企業。
著者は、金融領域でのITイノベーション戦略立案に従事し、
経産省「FinTech研究会」メンバーも務める第一人者です。

話題のフィンテックについて、その全体像をわかりやすく解説。
なぜ注目を集めているのか、これからの金融ビジネスにどのような影響を与えるのか、新技術の概要や規制のあり方についてなど、幅広くまとめました。
本書ではフィンテック1.0から4.0まで、その進化の段階に沿って整理しています。
これからどんな競争が引き起こされ、金融全般のビジネスモデルがどう変わっていくのかが理解しやすい構成になっています。
金融関係者はもちろん、新規参入を目指すベンチャー企業、金融システムを提供するITベンダー、法制度や規制について関心がある方々にもおすすめです。

<著者>
柏木亮二
野村総合研究所金融ITイノベーション事業本部上級研究員。
1996年東京大学経済学部卒業。同年、野村総合研究所入社。
製造業および情報通信分野の事業戦略コンサルティングを経て金融領域でのITイノベーションの戦略立案に従事。
専門はIT事業戦略分析、技術インパクト評価など。
経済産業省「産業・金融・IT融合に関する研究会(FinTech研究会)」メンバー

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