【読書録】『アマゾンと物流大戦争 (NHK出版新書) 』角井 亮一著

ロジスティクスは短期でコピーできるものではありません。
なぜなら、そもそも扱う商材自体が何十万、何百万と存在し、その1つひとつが大きさも異なれば、材質も違うものだからです。
陶器のような割れ物もあれば、食品のように賞味期限があるものもあります。
さらに物流センターに集まる商品は、常に入れ替わります。
まるでコンピュータにおけるソフトウェアのように、日々バージョンアップされ続けなければならないものなのです。
-「『アマゾンと物流大戦争』 #序章-アマゾンが変える世界」より引用

初の物流系の新書読破したんで、メモっときます。

きっかけ

元々ロジスティクスには興味を持ってて、つまんない授業をすっ飛ばしてた学生時代でも、ロジスティクスに関する授業はちゃんと受けていたように記憶している。

その授業は、日本ロジスティクス協会の浜崎章洋氏が行っていたものだ。
大手コンビニ「セブンイレブン」の創業ドキュメンタリーなんかをビデオで見る回もあって、アンポンタン学生(当時)なりに「ロジスティクスを研ぎすましただけで、こんなに大きなビジネスになるのね」と感じたものだった。

その後は、氏の『再生巨流』なんかを読んで、物流の重要性やビジネスにおける影響力を、なんとなくだが感じ取るようになっていた。
Cの福音』で有名な楡周平氏は、ロジスティクスに強い作家である。
『Cの福音』もロジスティクスの話だと捉えることもできる。



ただ、それ以来ロジスティクスに関わる機会はほとんどなかったんだけど、年末年始から物流業界のニュースを見る機会が非常に多くなってきたなぁ、と思い、「物流業界も今の仕組みのままじゃダメなんだろうね」ってことで、改めて勉強しようと考えた。

宅配便の一部に配達の遅れが出ている。
年末で荷物が増え、人手不足に陥ったためで、宅配大手の佐川急便はホームページ(HP)に「全国的に集荷、配達の遅延が見込まれる」と掲載した。

佐川によると、歳暮などで荷物が増えて配達に1~2日の遅れが出ている。
正月用品や食材をインターネットで購入する消費者が多く、小型の荷物が増えたのも原因だ。

住宅密集地の営業所には従業員を多めに配置しているが、荷物の増加が予想以上だったという。
佐川はHPで「時間により営業所への電話もつながりにくい状況」と説明している。
-佐川急便が「全国的に配達、配達の遅延」と“予告” 年末の荷物増加に人手不足で
(http://www.sankei.com/economy/news/161228/ecn1612280025-n1.html)

宅配最大手のヤマト運輸がついに決断した。
ヤマト運輸労働組合が来2018年3月期の取扱個数について、今期の数量を超えない水準におさえる総量規制を要望した。
会社側もおおむね受け入れる方針という。

これまでは採算が低くても荷物を受け入れてきたが、インターネット通販(EC)の拡大で荷物が増える中で単価下落と人手不足が限界点に達したようだ。
-ヤマトさえ耐えきれない「EC豊作貧乏」の苦悩
(http://toyokeizai.net/articles/-/160315)

というわけで、気になって本著の購入に至ったわけだ。
(Amazonで電子書籍のセール対象になっていたのも大きかった。笑)

本著について

本著『アマゾンと物流大戦争』は、世界中の小売(=物流)を支配しつつあるAmazonの影響力から、ロジスティクスの本懐を解くものだ。

とはいえ、Amazonが何もかも完璧ではないわけで、独自路線対抗している企業も多くいる。
そんな企業の例も多く出しながら、ロジスティクスを重要な戦略として位置づけ、戦うためのアドバイスを提供してくれる。

そして、著者の角井氏は、日本におけるロジスティクスの論客第一人者である。
物流における著書は山ほど出していて、ニュースアプリ「Newspicks」でも「プロピッカー」として名を連ねている。

角井氏は物流現場のドライバー労働者に気遣いをされるコメントが多く、そんなコメントを見ると、すごく優しい方なんだろうなぁとか勘繰ってみたり…

さて、本著は厳密にはロジスティクスの勉強をする本ではないと考える。
どちらかといえば、「市場の競争」に主眼を当てているもので、小難しい単語や英単語はあまり出てこない。

僕はこの構成に賛成だ。
理由は、今後ロジスティクスはメーカーや小売・サービス業にとって「配送手段」から「重要な経営戦略」という位置づけに変わるはずで、それに必要なのは机上の理論ではなく、実践を伴った大きなビジョンだと考えるからだ。

事例の紹介自体は、本著を読まれる方のために取っておきたく、ここでは理解を深めるために、少しだけロジスティクスそのものに簡単に足を踏み入れたい。

ロジスティクスについて

ではそもそも、ロジスティクスとはなんだろうか。

ロジスティクスとは、サプライチェーンプロセスの一部であり、顧客の要求を満たすため、発生地点から消費地点までの効率的・発展的な「もの」の流れと保管、サービス、および関連する情報を計画、実施、およびコントロールする過程である。
ロジスティクスは物流において、生産地から消費地までの全体最適化を目指すものである。
-Wikipedia「ロジスティクス」より
(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%82%B8%E3%82%B9%E3%83%86%E3%82%A3%E3%82%AF%E3%82%B9)

もしも可愛い女の子に「ロジスティクスと物流ってどう違うの?」と聞かれれば、「基本的には同じものだ」と答えていいと思う。

元を辿れば、ロジスティクスは軍事から発達した概念だ。

先の太平洋戦争で、領地を広げすぎた日本軍がこの概念をおろそかにし(あるいは戦略に失敗し)、徐々に追い詰められていった的な話は、ロジスティクスを普及せんとする人物の語りぐさとなっている。
http://d.hatena.ne.jp/k-takahashi/20150307/1425743741

そんなロジスティクスは、物流という言葉と比較すると、「ITシステムを含めたトータルな解決策」というイメージがあったが、現代社会においては、システムを導入し、ものの流れをトータルにデザインすることは、市場を生き抜く上でもはや必須になった。

物流会社が、ただ早く・安く・確実にモノを送るだけの時代は、とうに過ぎ去っているのだ。

例えば、海外輸送では「保税倉庫」で税金為替のコントロールもしなくてはならない。
Skycell」という海外の会社は、化学品や薬品を運ぶ際に温度や湿度の管理をコンテナで行うが、IoTを用いて、内容物の状態を常に把握するようにしている。
https://skycell.ch/products-3/

また、外気との温度差を常にチェックし、冷却などに余計な電池を使わないよう工夫する。
運んでいる品物の性質が変わらないようにするためだ。

今や単に海外から荷物が届くことぐらい、当たり前なのだ。

その上で、どれだけの価値を提供できるかで、その企業の真価が問われると言って良い。

最後に

ごちゃごちゃ書いてたら長くなってしまった…

これだけロジスティクスに思い入れがあるというのも、やはり最近の物流ニュースに色々と思うところがあるからだ。

インターネット通販の拡大で深刻化する物流業者の人手不足や交通渋滞を解消するため、官民が受取人の不在時にも荷物を預けられる宅配ボックスの普及に取り組む。

政府は4月から設置費用の半額を補助する制度を新設し、業者が駅やコンビニに宅配ボックスを設置するのを後押しする。
再配達を少なくして配送効率を高め、ネット通販の拡大に欠かせない物流網の維持をめざす。
-宅配ボックス普及へ補助金 再配達減らし効率化
(http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS16H4F_W7A110C1MM8000/)

佐川急便の配達員が荷物や台車を投げ飛ばす様子が映された動画がYouTubeにアップされていた問題で、佐川急便の広報担当者は12月26日、ハフィントンポストの取材に対し、同社の配達員であることを認めた。

投稿されている動画は、マンションの入り口階段のような場所で、佐川急便のユニフォームを着た男性配達員が撮影されているもの。
マンションから階段を登って出てきた配達員は、道路においたダンボール箱のようなものに突然、台車を投げつける。
また、強風の影響なのか、飛ばされたダンボール箱のようなものを拾って地面に叩きつけているような行動も収められている。
-佐川急便の配達員が荷物をブン投げる動画、同社が事実と認める
(http://www.huffingtonpost.jp/2016/12/26/sagawa-_n_13855218.html)

上のニュースの「宅配ボックス設置」って、政府のお金を使ってやることなのか?
それに、佐川の荷物投げつけ問題も、「気持ちはわかる」と、そこまで非難する声が強くなかったように思う。

例えばコレ、ワタミの店員とかヤマダ電機の社員とか、他の業界の人が製品に似たようなことをやってたら、もっと非難轟々だったんじゃなかろうか。

何が言いたいのかというと、「物流業界、もっと頑張れるんじゃないの?」ってことだ。
というのも、別に精神論をぶつけたいわけじゃない。

確かに、現在の荷物の量は、物流企業のキャパシティを超えるものかもしれない。
それは、トラックドライバーやオペレータの数が不足しているというのも当然あるだろう。

その上で「やれることが他にもあるんじゃないか」ということだ。

例えば、再配達をするときに、客からお金を取るようにする。
そうすれば再配達の回数も減るし、減らなかった分はお金ももらえる。

配達できる荷物の総量が増えるので、荷物ひとつあたりの配送料も下がる
ということは通販の値段も下がるわけで、顧客・EC・物流企業がwin-win-winだ。

おそらく現状、値上げ再配達有償化という取り組みに当たり、取引先や消費者に強く出れず、物流業界全体がチキンレースになっているのではないか。

だが、そこでお客さんに「いや、無理です」ということが重要なのだ。

ごちゃごちゃ言われたら、「いや、最近は人の確保や再配達でウチも厳しくて、この予算やスケジュールで契約するのは難しいです。他の会社を考えていただくか、計画を修正しましょう。」と本当は言うべきなのだ。

一時的には他社に乗り換えられる可能性もあるだろうが、やせ我慢せず適切にリソースを配分する企業に人が集まるはずで、長期的に見れば必ず自分の会社にお客さんが戻ってくるはずだ。

まぁ、僕の考えはズブの素人の戯言だが、そういう大きな視点でロジスティクスを考えれば、社会はもっと良くなるはずだ。

ロジスティクスを操る企業には、それを実行できるはずだ。
ぜひその力を、社会のために使ってもらいたい。

アマゾンと物流大戦争 (NHK出版新書)

<概要>

生き残りをかけた競争が今始まった!
アマゾンが仕掛ける物流革命から、今、経済の地殻変動が起こり始めている。ウォルマート、楽天、ヨドバシカメラ─アマゾンに立ち向かうための戦略はあるのか? あらゆるビジネスを飲み込む巨人アマゾンの正体とは? 流通先進国アメリカで取材を重ねる気鋭の物流コンサルタントが、日米ビジネスの最前線からレポートする!

[内容]
序章 アマゾンが変える世界
第一章 物流のターニングポイント
第二章 巨人アマゾンの正体
第三章 物流大戦争の幕開け

<著者>
角井 亮一
1968年大阪生まれ、奈良育ち。
株式会社イー・ロジット代表取締役兼チーフコンサルタント。
上智大学経済学部を3年で単位修了。米ゴールデンゲート大学でMBA取得。
船井総合研究所、不動産会社を経て、家業の物流会社、光輝物流に入社。
日本初のゲインシェアリング(東証一部企業の物流センターをまるごとBPOで受託)を達成。
2000年、株式会社イー・ロジットを設立し、現職。
現在、同社は230社以上から通販物流を受託する国内ナンバーワンの通販専門物流代行会社であり、200社の会員企業を中心とした物流人材教育研修や物流コンサルティングを行っている

(Amazonの製品紹介ページより引用)

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