【読書録】『ゲノム編集とは何か 「DNAのメス」クリスパーの衝撃』

読み終わったので、忘れないうちにメモっとく。

今回紹介するのは、こないだのAmazonセールでポチった『ゲノム編集とは何か 「DNAのメス」クリスパーの衝撃(講談社現代新書)』でござい。

テクノロジ系の本はよく読むんだけど、こういうバイオ系は全然だったんで、分かりやすそうなこっちを読んでみた。

ひょっとすると、新書じゃなくて単行本形式の『ゲノム編集の衝撃―「神の領域」に迫るテクノロジー』の方がわかりやすいのかも?
まぁ、その辺はAmazonセール対象だったってことで、ご愛嬌。笑

さて、元の本の話に戻そう。

クリスパー」という遺伝子操作の技術にフォーカスしたバイオ系テクノロジ本である。

帯で「Google」や「Amazon」の名前が出ているが、こちらはおまけ程度

ちなみに、著者の小林 雅一氏は、人工知能の入門本の名著『AIの衝撃 人工知能は人類の敵か』の著者でもあり、テクノロジ系の解説本の著者としての実力は折り紙つきの人物である。

私が人工知能ブームが起こった最初に読んだ本で、そのテクノロジの力の虜になりました。

難しい技術を変な比喩に置き換えず、言葉の力をうまく使って、わかりやすく伝えることに長けている著者だと感じます。
モンテカルロ探索」とか、普通に説明したら絶対わからないような手法も、図形に頼らずにうまく表現されてます。

また話が逸れてしまった…

ささ、クリスパーという技術を簡単に振り返ってみる。

  • クリスパーは、「遺伝子のメス」とも呼ばれ、DNAの切断や書き換えをピンポイントで行うことができる技術である
  • 専門家が「高校生でも数週間で使えるようになる」と表現するほど扱いやすく他の生物への代用も行いやすい
  • 2〜3日後には作業結果を知ることができる高いスピード感も併せ持つ

クリスパーとは、↑こんな感じの技術のこと。

高校の時に生物の授業で習った、「AとT」「GとC」の構造を、自由に編集できるのだ。

この技術を使うと、今の研究がどうなるかというと…

  • (実は)実現にランダム性の強かった「遺伝子組み替え技術」と違い、DNAの狙った部分のみを編集が可能で、確実性の高い研究を実施できる
  • 研究のスピードが飛躍的に上がる。結果の出る速度はもちろん、研究結果は他の生物でも代用が可能なため、何度も同様の検証を行う必要がない
  • 研究スピードが上がるということは、研究コストの低減につながる。

↑こうなるわけ。
それには、GoogleやAmazonが提供している「クラウドコンピューティング」や「人工知能」と言った最新技術も一役買ってくるわけだが。

それで、最終的に我々の生活がどう変わるのかというと…

  • 肉量の多い魚や肉・病気や害虫に強い作物を生み出すことで、食糧危機の対策になり得る
  • 遺伝子レベルでの病気の対策・予防が可能で、多くの病気を根絶させることができる
  • (理論上)優生学的に、優れた人間を生み出すことが可能になる
  • ↑こんなイメージだ。

    特に3つ目の「(理論上)優生学的に、優れた人間を生み出すことが可能になる」という部分は、今後様々な議論が起こると予想される。
    そもそも、線引きが曖昧である。

    例えば、「足が不自由な病気にかかる」と判別した時、「足の不自由にならないよう遺伝子編集をし、脚力を強化する」ことは、おそらくほとんどの人は「医療行為」にあたると感じ、あまり文句は言わないはずだ。

    では、これが「アルツハイマー」の場合、脳機能を強化することはどうだろうか?
    このあたりから、議論の余地が出てくるのではないか。
    (※本著では、アルツハイマーは遺伝子操作のみでは治療できないとしているが)

    人類は、自らが持つ「高度な知能」を、「社会性」を用いて集約させることで、多くのテクノロジを生み出し、数多くの困難を乗り越えてきた。
    その力が、自分たちの倫理を超えるものであったら、どのように扱おうとするのだろうか?

    拒絶”か受容”か、それとも…

    ゲノム編集とは何か 「DNAのメス」クリスパーの衝撃 (講談社現代新書)

    <概要>
    いま、グーグルやアマゾンといった世界的なハイテクIT企業が、その巨大なビジネス・ポテンシャルに魅かれ、巨額の投資をしている超先端技術をご存じだろうか。

    「ゲノム編集」である。

    この史上空前の技術、そしてそれが私たちの人生や暮らし、さらには社会に与えるインパクトなどをわかりやすく解説するとともに、熾烈な特許争いの舞台裏や科学者に群がる巨大企業の実態にも迫った、必読書!

    ———-

    みなさんは、これまでに「自分を変えたい」と思ったことがあるだろうか?

    たとえば自分の顔、身長、体型、性格、知能、運動能力、さらにはアレルギーなどの各種体質……
    これらすべてに満足している人など、ほとんどいないのではないだろうか?

    にわかには信じられないかもしれないが、(少なくとも技術的には)それが可能になる時代が迫っている。

    なぜなら、先に列挙した特質のすべてに遺伝子が強く関与しており、これを操作する遺伝子工学や生命科学の分野でいま、過去に例を見ない驚異的な技術革新が起こっていて、それこそがこの「ゲノム編集」だからだ。

    世界中の科学者たちは、この技術によって、すでに「肉量を大幅に増やした家畜や魚」「腐りづらい野菜」などの開発に成功している。

    今後、この「ゲノム編集」は「iPS細胞」などの異なる技術を組み合わせることで、がんや糖尿病、あるいはアルツハイマー病など、現代社会に多く見られる病気の治療にも応用されると見られている。

    グーグルやアマゾンなどはすでに「生命科学とITの融合」に取り組み始めている。
    さまざまな病院や研究機関などと連携して、ゲノム(DNA)データをクラウド上に集積、AI(人工知能)でパターン解析することにより、やがて複雑な病気の原因遺伝子や発症メカニズムを解明していくというのだ。

    高い知力と強靭な肉体、そして端麗な容姿を兼ね備えた「デザイナー・ベビー」の誕生を可能とする「ゲノム編集」について、倫理的な問題をもまじえながら、わかりやすく説いた入門書。

    <著者>
    小林 雅一
    1963年、群馬県生まれ。KDDI総研リサーチフェロー、情報セキュリティ大学院大学客員准教授。
    専門はITやライフ・サイエンスなど先端技術の動向調査。東京大学理学部物理学科卒業、同大学院理学系研究科を修了後、雑誌記者などを経てボストン大学に留学、マスコミ論を専攻。
    ニューヨークで新聞社勤務、慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所などで教鞭をとった後、現職。
    著書に『AIの衝撃 人工知能は人類の敵か』(講談社現代新書、2015年)、『クラウドからAIへ アップル、グーグル、フェイスブックの次なる主戦場』(朝日新書、2013年)など多数。

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