改革なきSIerに未来はない-システムインテグレーション再生の戦略(書評)

前作に引き続き、(一応)SI業界の人間なので読んでみました。

内容としては、前作「システムインテグレーション崩壊」の内容を受け「じゃあどうするべきなのか?」という具体策にスポットを当てたものになっています。
実際の他社事例(ソニックガーデン社やウィングアーク1st社などもありますね)が、インタビュー形式でたくさん載せてあるのも非常に良いです。

変わることを拒むSI事業者は、これでもう言い訳できないですよ。
他の会社はどんどん変わって、実際に成功してるわけですから。
次はあなた方の番です。

これからSI業界を目指す方も、ちらっと読んでみてはいかがでしょう?

というわけで、ゴリゴリ引用して、SI業界の変革を促していきたいと思います。

前提条件

まずは、SIerの現状や課題を整理しましょう。

工数積算で金額が決定するのに、成果保証を求められることに問題がある。

☆時代の流れが速くなり、開発の短期化が求められる。業務個別に向き合う余裕がなくなる

コモディティ化による価格下落。どれを買っても同じ。

ここは基本なので、押さえておきましょう。

今後のSIの3つのトレンド

まずは、SI業界の今後のトレンドを3つ、紹介しています。

1.オープン化

 ・OSSに牽引され、ソフトウェアにとどまらず、多くのものがオープンになる

 ・ハードウェアやデータもオープン化する

 ・人のつながりや世の中の出来事もデジタル化し、オープンになっていく

2.スマート化

 ・人工知能に牽引され、人と機械の新しい関係が生まれる

 ・利便性や生産性だけでない、新しい機械の活用を生み出す力となる

3.サービス化

 ・クラウドコンピューティングに牽引され、インフラやプラットフォーム、アプリケーションの全レイヤーがサービス化

 ・モノはサービスを構成する一部となり、サービスがビジネスの主体になる

はしょりすぎて意味不明な部分もあると思いますが、そこは本を読んで確認してね(投げやり)。

この3つのトレンドは要確認です。

今後のSIを支える10のテクノロジー

今後注目すべき新しい技術です。
説明するまでもないものは、説明をつけてません。

1.SDI

 ・インフラ全体を仮想化できるようになると、ソフトウェアへの設定だけでシステム全体を構成、管理、制御できる

 ・物理的な据え付けや導入、接続作業は必要なくなる

2.コンテナ型仮想化

 ・仮想マシンとOSの軌道を必要としない、高速でオーバヘッド不要な仮想化方式

 ・物理サーバーを分割するのではなく、1つのサーバをまるまる仮想化するイメージ

3.新しいハードウェアテクノロジー

 ・ベアメタル:IaaSに必要なサーバを、仮想サーバではなく物理サーバで調達する仕組み

  →性能の安定性を確保

 ・フラッシュストレージ:低価格化が進み、クラウドサービスにも利用されている

4.Iaas

 ・インフラをクラウドで提供する仕組み

 ・コモディティ化を制し、競争に勝つためには「規模の経済性」を生かす必要がある

5.IoTとビッグデータ

6.Paas

 ・システムの開発・実行基盤をクラウドで提供

 ・コードを一から書く必要がなく、開発効率が大幅に良くなる

 ・機能や利便性で競争を目指す

7.SaaS

8.ソーシャルとウェアラブル/モバイル

9.スマートマシン

 ・ビジネスの主導が、人間から機械に移り変わる

 ・人月積算が通用しないので、スマート化にどう生かすかが課題

10.コンテキストテクノロジー

 ・コンピュータがユーザの事情や背景を汲み取り、サービスの内容に反映させる仕組み

 ・利便性とプライバシーの兼ね合いが難しい

 ・ウェアラブルやIoTの普及で加速する

大体こんな感じですね。
聞いたことあるものから、初めてなものまで、様々な技術が今後必要とされます。

ポストSIビジネスの3つの戦略

では、次世代型SIerはどのような戦略をとるべきなのか。
本著では、3つに分けて説明しています。

■1.ビジネス同期化戦略

 ☆主にスピードを求める戦略のこと。

 ○内製化支援

  概要:ユーザー企業が、自らアプリケーション開発ができるように支援する。主導した事業者にオーダーが集中する。

  メリット:競合他社の排除と、長期継続的な関係の実現

  課題:ユーザーに内製化への強い意志が必要。また、ベンダーには標準化や人材育成のノウハウが必要
 
 ○シチズンディベロッパー支援

  概要:シチズンディベロッパー(一般開発者)を対象に、開発ツールやそれを使いこなすノウハウを提供する。

  メリット:技術的に難しいシステム連携や高度な開発は、別途の受託開発が期待できる。

  課題:短期的な成果が見込めない。相手が情シスでない。

 ○アジャイル型請負開発

  概要:アジャイルで受託開発を行う。納期と工数・金額を確定させ、その範囲で優先度の高いプロセスから開発する。

  メリット:仕様の齟齬が生じにくい。開発工数を削減できれば、高収益が期待できる。

  課題:顧客・ベンダーともに、アジャイルに対する理解が必要。

■2.アプリケーションプロフェッショナル戦略

 ☆従来の業務ノウハウを活かし、専門特化することで競合との差別化を目指す

 ○特化型SaaS/PaaS

  概要:従来の開発で培ったノウハウを、クラウドサービスとして提供する。

  メリット:ビジネスのスケールが可能。ストックの積み上げも期待できる。

  課題:他者に容易に真似されないノウハウや実績が必要。不特定多数の利用を想定し、UI/UXへの配慮も必要。

 ○ビジネスサービス

  概要:事業者がシステムを使い、顧客にサービスを提供する。一括でアウトソーシングを受けるビジネス。

  メリット:顧客の業務プロセスに組み込まれるので、長期継続的なビジネスが期待できる。

  課題:他者に容易に真似されないノウハウや実績が必要。人的作業のための要員も確保しなければならない。

 ○業務特化インテグレーション

  概要:高度な専門知識やノウハウが必要なシステム開発に特化する。

  メリット:工数ビジネスだが、単金を高く設定でき、高収益が期待できる。

  課題:他者に容易に真似されない特殊性が必要。ノウハウを持つ要員の確保が難しい。

■3.クラウドプロフェッショナル戦略

 ☆クラウドに専門特化し、お客様がクラウド上のインフラを高度に利用するのを支援する。

 ○クラウドコンサルティング

  概要:最適なクラウド環境を構築するためのアドバイスをして、システム企画・設計を支援する。

  メリット:急速に需要が拡大しており、案件が獲得しやすい。

  課題:サービスの変更や機能の拡張が頻繁にあるため、それに追従するスキルを身につけなければならない。

 ○クラウドインフラ構築

  概要:ITインフラを、クラウドサービスを生かして構築する。

  メリット:急速に需要が拡大しており、案件が獲得しやすい。

  課題:サービスの変更や機能の拡張が頻繁にあるため、それに追従するスキルを身につけなければならない。

 ○クラウド運用管理

  概要:クラウドの運用管理に関わるスキルや人材不足を肩代わりし、需要に応える。

  メリット:急速に需要が拡大しており、案件が獲得しやすい。

  課題:サービスの変更や機能の拡張が頻繁にあるため、それに追従するスキルを身につけなければならない。

いよいよややこしくなってきましたが、、、

この辺はチラ見して、「こんな考えもあるのね」って感じで進んだらいいと思います。

ポストSI戦略の5つの特徴

先ほどの戦略のまとめとして、特徴を洗い出してみました。

 1.サービス視点

  →クラウドの普及や人工知能による自動化・自律化は、テクノロジーの難しさを隠蔽する方向にシフトする

 2.高度な専門性

  →コモディティ化との戦いを優位に進める

 3.クラウドネイティブ

  →今後新たに開発されるシステムは、クラウドを前提としたものが多くを占める

 4.ビジネススケール

  →工数の拡大が見込めないので、ビジネスを拡大させる施策が必要

 5.マーケティング

  →ITは「作る過程」から「結果」に支払いの対象がシフトするので、「誰に売れるか?」を見極める必要がある

このまとめであれば、覚えておくのもさほど難しくないと思われます。
これぐらいは頑張って覚えましょう。

グローバル戦略を成功させる考え方

最後はグローバル戦略です。

グローバルはもちろん重要な戦略ですが、やみくもにやっても現地のベンダーには勝てないので、上手く戦うことが重要です。

 ○グローバル戦略3つのパターン

  1.プラットフォーム戦略

   ・HやN、Fなど

   ・もともとハードウェアを作っていた会社が、BtoBに特化し、クラウドを中心としたプラットフォームを展開する

  2.グローバルアウトソース戦略

   ・IBMやアクセンチュアなど

   ・SI市場は各国によって大小があるが、フルアウトソースはどこにでも一定の市場がある。そこを狙う。

  3.SIノウハウ提供戦略

   ・富士通やユニアデックスが、PCのサポートなどで行う

   ・国内ベンダーにしかできないことを見極めて、その分野へ進出する。

 ○基本戦略4つのステップ

  1.提案価値の「型」をつくる

   ・その国では提供できない価値を、外国企業として提供することに意義がある

  2.SI市場を特定する

   ・その国でSI市場が形成されるかを見極める

  3.フィージビリティ(採算性)を確認する

   ・地元企業やその国の成長率などを考慮する

  4.現地法人化を進める

   ・早期から、現地人を重要なポストに付け、活動することが重要

大雑把ですが、実際の事例も織り交ぜながらの紹介でした。

まとめ

いや〜、引くぐらい上手くまとめてあるなぁ、という感じです。

読んでて膝を打つ場面から、「そんな技術もあるのね」と豆知識的なことまで、幅広く知識を蓄えられます。

私はまだそんな場面はないですが、経営会議なんかであれば、この本をベースにした戦略を発表してみてもいいかもしれませんな。

ちなみに、この本の内容をパワーポイントでダウンロードできるそうで(本買ったらURLがついてるよ)、是非一度ダウンロードしてみてください。

以上、駄文失礼しました。



システムインテグレーション再生の戦略 ~いまSIerは何を考え、どう行動すればいいのか?~(技術評論社)

<概要>
「SIビジネスはなくなってしまうのでしょうか?」

これまでと同じやり方では、収益を維持・拡大することは難しくなるでしょう。

しかし、工夫次第では、SIを魅力的なビジネスに再生させることができます。
その戦略とシナリオを、豊富な図解と事例とともに集大成しました。
これからのビジネスを読み解くうえで不可欠なトレンド、ビジネスモデル、グローバル戦略、プライシング戦略、人材育成戦略、そして新規事業の進め方までがこれ1冊でわかります。

人月を前提として収益構造はもはや限界。そんな時代に生き抜くための3つの戦略と9つのシナリオを解説。

<著者>
斎藤昌義
ネットコマース株式会社代表取締役。
1982年、日本IBMに入社、営業として一部上場の電気電子関連企業を担当。
その後営業企画部門に在籍した後、同社を退職。
1995年、ネットコマース株式会社を設立、代表取締役に就任。
産学連携事業やベンチャー企業の立ち上げのプロデュース、大手ITソリューション・ベンダーの事業戦略の策定、営業組織の改革支援、人材育成やビジネス・コーチング、ユーザー企業の情報システムの企画・戦略の策定などに従事。

後藤晃
株式会社フレクト経営学修士(MBA)。
SwankyConsulting代表。
中堅SIerにてIT・業務コンサルティングを経て、2008年に新日鉄住金ソリューションズに入社。
大手金融機関の大規模プロジェクトを担当後、クラウド企画、マーケティングを担当。
2015年3月に株式会社フレクトに入社。
SFA、CRM、MAのコンサルティング、事業戦略やIoTサービスの戦略立案およびマーケティングを担当、その他採用戦略などに従事。
その傍ら、個人事業として、コンサルティング、出版、教育事業を展開。

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